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一言にマフィアのボス、と言っても、仕事は色々ある。
そのほとんどが自分達の組織を大きくする為に必要な事で。
特に多く、最も重要なのが人付き合い。
他の組織や個人が主催するパーティーであったり、個別の会食であったりと、規模の大小に関わらず、人と会い、言葉を交わす機会はとても多い。
緋蓮は、そのところを上手く遣り繰り出来るみたいだけど、俺、梁は未だにそれが苦手で。
…だから今も、俺個人宛ての招待状に、全力で頭を悩ませているところだった。

「…はぁ。」
仕事が片付いて、綺麗になった机の上。
そこにぽつんと残された便箋に、俺はまたため息を吐いた。
手紙の差出人は、とある会社のご令嬢。
以前別の会社が催した創業記念パーティーに行った時に出会った方だ。
彼女の父親との関係は凄く親密なのだが、彼女個人としてはただそれだけの関わりなのに。
「何で個人主催のパーティーの案内なんかが、俺のところに来るんだよ…。」
薄い桃色の便箋に可愛らしい小鳥の模様が刻まれたそれが届いたのは、今日の書類を全て片付け終わり、さぁ帰ろうとした矢先だった。
普段この手の郵便物は纏めて午前中に渡されるのだが、郵便屋を経由せずホテルの受付に直接持ってこられたそうで、支配人達が気を利かせて、安全性を確かめていたらこんな時間になってしまったらしい。
…それは構わないんだが、問題はその内容だった。
どう解釈を変えても、身内だけで行う限定的なパーティーに招待する、と言った内容になってしまうそれ。
緋蓮にこんな物が届くならまだ分かる。
彼奴は昔から人気者だったし、女性にもモテるから、個別に誘いを受けるなんてしょっちゅうだった。
大抵邪険に扱っていたけど。
でも俺は、幼少時代からロクな扱いを受けた経験もないし、学生時代も緋蓮以外との関係は嫌な思い出しかない。
ましてや他人からの誘いなんて、貿易部の仕事を除いたら、今現在も緋蓮とセットだ。
それが嫌だとか、そんな感情は微塵もない。
だからこそ、この小さな紙切れに対する的確な対処法が、全く頭に浮かんで来なかった。
「無視…は、出来ないしな…。でも俺一人で行っても…」
そうブツブツと呟きながら、椅子にもたれて天井を仰いだその時。
ぴぴっ、と言う音と共に、扉が開く音がした。
俺の在室中は指紋認証ロックが外れる様にこっそり設定してある部屋に、わざわざ機械に指を読み込ませ、ノックなしに入ってくる人間と言えば。
「リャーンー。まだ仕事終わんないのー?」
そんなげんなりした声で、予想通り、扉から緋蓮が顔を出した。
「終わってる。今から帰るところだよ。」
俺はそう答えて、招待状を便箋にしまい、椅子から腰を上げる。
…その動きに、緋蓮の眉根が上がった。
「手紙?それ、住所書いてないね。」
あぁ、しまった。彼奴の視力の良さを忘れてた。
俺の机から扉までは約7から8m。その距離でも、緋蓮は俺の手元にあるA4版書類のフォントサイズ11の文字を完璧に読み上げるのだ。
そんな彼にとって、便箋に住所が書いてあるか書いていないかの判別なんて、造作もない事で。
緋蓮は俺の前まで来ると、俺の手の中にあった便箋をひょいと手に取った。
「…可愛い封筒だね。中身、見てもいい?」
「別にいいけど…。」
別に緋蓮に見られてはマズい内容ではないし、拒否するいわれもない為、俺は了承の言葉を口にする。
緋蓮は黙ったまま、手前に垂れ下がったベロを上げ、中から招待状を引っ張り出す。
そしてゆっくりと文字列に視線を滑らせた後、俺を見る。
「で、どうするの?」
「いや…どうするもこうするも、相手の親御さんとの関係もあるし…。正直悩んではいるんだが…」
俺は正直に答えて、はぁ、と肩を落とす。
行きたくない、というのが伊梁個人としての本心なのだが。
紫鱗曾の伊梁としては、行かなければならない義務。
その二つの感情に板挟みになっていた俺を、緋蓮はしばらく見ていた。
「梁が行くなら俺も行く。」
「…えっ?」
「だって一人で来い、だなんて書いてないでしょ?」
緋蓮はそう言って、軽く首を傾げた。真顔で。
ああ…また拗ねてるな、と、俺は内心で呆れた。
緋蓮は、家族を多く失っている所為か、幼少からずっと一緒にいた俺と同じ行動をしたがる。
それが邪魔される様な事には普段の倍の嫌悪感を表すし、邪魔を排除する為に、時には流血沙汰まで引き起こす始末だ。
だからきっと今回も、「自分は誘われていないのに梁だけ誘われてるなんて許せない。」とかなんとか考えているんだろう。
確かに、招待状には「是非お越しください」とは描いてあるが、「お一人でお越しください」とは書いていない。
だから緋蓮を連れて行っても、全く問題はないだろう。
「梁。一緒に行っちゃだめ?」
緋蓮は表情一つ変えず、訊ねてくる。
そんな、ダメと言っても着いて来そうな顔をして言われたら、答えは一つしかないだろうに。
そんな事を考えながら、俺は構わないとの旨を口にする。

嫌いで嫌いで仕方ない人付き合いに、頼もしい味方が来てくれる事を心の中で喜びながら。
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Author:川野麟&叶助
・川野麟(小説・ブログ担当)
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