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幹部会の次の日。
香港のホテル最上階、梁の事務所に、4人の構成員が呼び出された。
内一人は以前の会議にも参加していた林 燎範。
梁の秘書で、中国国内の傘下の組織の伝達役を担う綾明。
薬の販売ルートの元締めを行う 李 芳。
そして、21年前の殲滅活動に現場で従事し、今現在もヨーロッパで紫鱗曾が得た土地や資産を管理する蘇 メイソン。
どの人物も、様々な分野で梁が最も信頼する部下達だ。
「最近ヨーロッパもまた賑やかになってきたと思ったら、南もっすか。奴らもこりねぇなぁ…。」
ぱさっ、と音を立てて、地図や写真がふんだんに使われた資料が捲られる。
それを眺めているのは、普段は香港から最も離れたヨーロッパで梁の命令を遂行しているメイソンだ。
手にしている資料は会議の後、既に情報収集に奔走していた諜報部の構成員が集めたものを、林が新たに纏めた物だ。
中には“耳”や“口”が襲われた場所の写真や、返り討ちにした敵のしたっぱの遺体写真、使われた武器といった現場写真から、潜入調査で得た資料の写しといった物も含まれており、今回の衝突の一連の流れが分かるようになっている。
なお、同様の資料は既に梁や緋蓮の元に届いているのだが、こちらは文章もふんだんに使われていた。
今、メイソンの手元にあるのは、壊滅的な読解力と周囲に言われる彼専用の資料である。
だが、そんな言葉には出されない軽蔑もお構いなしに、メイソンは大きなソファーにふんぞり返って、パラパラと資料を眺めていた。
「以前お前が報告してくれた、Lancia関係の疑惑が出ていた貿易会社にも送金が確認された。黒と見て間違いないだろう。」
「マジですか。やったね。」
燎範の言葉に空いた手でガッツポーズをしながら、メイソンは資料を見進める。
その偉そうな態度に正面に座っている芳が物申したげな顔をしていたが、いつもの事じゃないですかと言わんばかりの綾明のの呆れた苦笑いに、ため息一つで言葉を飲み込んだ。
「でもボス~。俺って今回必要っすか?これぐらいの事なら林大兄だけで十分なんじゃ。」
資料を読み進めていくうちに全貌が見て取れてきたのか、メイソンは不思議そうに首を傾げる。
彼の言葉に、自分の仕事机の椅子に腰を下ろしていた梁は深く頷いた。
「確かに抗争自体の規模はヨーロッパの全盛期に比べれば遥かに小さいが、仕事に実害が出てる以上短期決戦で事を済ませないと被害が拡大しかねない。」
そうだろ?と、彼が問いかければ、燎範と芳が同時に頷く。
「金勘定は早いお前なら、10万単位の取引が5、6件流れてる現状が続いたらどうなるかの察しはつくだろう?」
芳はそう言って、ちらりと壁の時計を見た。
時刻は14時。昼時だ。
「総経理。そろそろお時間です。」
「ん?…あぁ、そんな時間か。」
梁はそう言って、椅子から腰を上げる。
「綾明。留守は頼んだぞ。」
「畏まりました。」
「林は引き続き、奴らの動向を探れ。」
「はっ。」
コート掛けに掛かったジャケットを羽織りながら、梁はテキパキと指示を飛ばす。
そして、突然何が起きたのかと口を半開きにするメイソンの前まで来ると、彼にも声を掛けた。
「ついて来い。李も来れるか?」
「はい。総経理の仰せのままに。」
「どこ行くんっすか?」
メイソンの真っ当な問いに、何故か梁は凄く嫌そうな顔で、ため息を吐くように答えた。
「…迎えだよ。うちの組織で一番厄介な猛犬のな。」


──────────────


同じ頃。
香港中心街の雑居ビル群が建ち並ぶ通りに、一台の外国車が止まった。
「いやぁ。結構賑やかなところに居座ってるね!」
そう言いながら後部座席から出てきたのは、スーツをしっかりと着た緋蓮であった。
その後から、書類の入っていると思われる封筒を持った女性が続いて現れる。
「総経理。お時間が迫っております。お急ぎ下さい。」
「分かってるよ。もー…赤夏は真面目なんだからー。」
緋蓮はそう苦笑いすると、繁華街の中へと歩き出した。
二人が向かった先には一軒の茶葉屋。
…昨日報告がされた、敵対組織の根城だ。
緋蓮は何一つ臆する事なく、店の軒先を潜ると、沢山の茶葉や漢方が並ぶショーケースの向こうに立つ店員に声を掛ける。
「電話したホテルの者なんだけど、社長さんは今居るかな?」
そう伝えると、店員は思い当たる節があるかの様に、表情を輝かせた。

話は月没を挟んだ昨日にまで遡る。
緋蓮は会議の後、梁に会う前に、自分の秘書である赤夏を呼び出していた。
「あのさ、このお店に連絡取ってくれないかな?」
そう言って彼が指したのは、先程の会議で使われていた貿易部の資料の一節。
「ホテルで使う茶葉の取引がしたいって言ってほしいんだ。」
「…畏まりました。」
ページを走り読みした赤夏は、何かを察したように目を細めたが、余計な事は何も言わず、資料に記された必要事項を自身の手帳に走り書きした。

その後、赤夏の連絡と交渉により、急な話にもかかわらず、商談が決まり、緋蓮は店に訪れたのである。
本来の目的を果たす為に。
「俺、凄くワクワクしているよ。一体どんなものが出てくるかなぁ。」
楽しみだなぁ、と笑顔を零す緋蓮の後ろで、赤夏はぴくりとも表情を変えなかった。

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Author:川野麟&叶助
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