上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--|スポンサー広告||TOP↑

「そう言えば、」
階段を下りながら、梁は後ろからついてくるメイソンに振り向きながら声を掛けた。
「さっきの電話はなんだったんだ?」
「…あ。えっと……」
すっかり硝煙の臭いに気を取られ、報告を忘れていたメイソンは、片方の口角を引き攣らせながら明後日の空を見る。
「それが……あまりいい知らせじゃなくて……」
「なんだ、林から何か通達されたのか?」
話をはぐらかす様な発言をするメイソンに、不審な顔で梁は訊ねる。
そうこうしているうちに階段を降り切り、二人はビルのロビーに出てきた。
「いや、そういうのじゃないんですよ。ってかむしろそれより悪いというかなんというか……」
メイソンは、はははと乾いた笑いを上げる。
「良くない内容なら早く言え。」
話をはぐらかす彼に眉間に皺を寄せ、梁は視線を前に戻そうとした。
…その時。
「……。」
梁は突然足を止める。
そして、自分が顔を巡らせた方向を戻る様に顔を戻した。
蛍光灯が切れており、ガラスの扉の向こうから差し込む夕日で何とか明るさを維持しているロビーに、座面の破れたソファーが対面に並んでいる。
その片方に座る人影は、梁が見間違うわけのない人物の姿で。
「終わった?」
その人物は梁に笑顔を向け、小首を傾げてくる。
だが、その目には影が掛かり、具体的な表情は分からない。
「…なんでここにいるんだ。勝手な行動するなと言っただろ。」
「うん。でも、心配になっちゃって。ほら、前みたいに大怪我したら大変だし。」
そう答えて、彼はソファーから腰を上げた。それによって、彼の目元にも光が入る。
「梁の言う通り、勝手な事はしてない。梁を迎えに来て、そのまま一緒に行動するだけだよ。」
「……それでお前の身に何かあったらどうするんだよ…。」
「そんな事あると思ってるの?」
「……。」
口元に笑みを浮かべたままの緋蓮にそう言われ、梁は口を紡ぎ、そっぽを向く。
そして彼に気付かれない様にチラリと彼の目を見た。
光が射しているにも関わらず、瞳孔が開ききっている所為で真っ黒な瞳が視界の中で強調される。
そんな状態の彼を、梁はもう何度も見てきた。
同時に、そんな状態の彼が万が一でも今後起こる可能性のある闘争の空間に接触でもしたら、どうなるか。
「…とにかく、今日これで俺の仕事は終わりだから。帰るぞ。」
「あ。そうなの?じゃあ赤夏はこのまま上がらせちゃうよ。梁たちの乗ってきた車でそのまま屋敷に帰ろっか。」
梁の言葉に緋蓮の声が楽しそうに弾んだ。
「…お前、まさか赤夏と二人でここに来たのか?」
口ぶりに違和感を感じた梁は、ぐいぐいと腕を引っ張る緋蓮に問う。
「ん?そうだよ。俺一人でいいって言ったのに、着いてきちゃって。」
しかし何を今更と言わんばかりのケロリとした顔で彼は返してきた。
それと同時に今まで黙っていたメイソンが恐る恐る手を上げる。
「…あの、俺はどうすれば。」
「君は自力でホテル帰れるでしょ?」
「……はい。」
ばっさりと切り捨てられるような形になったメイソンはもちろん言い返せる訳もなく、肩を落とす。
ちなみに、現在地から、ホテルのある九龍地区の中心街までは、徒歩で1時間以上かかる。
扱いに対し、それは酷いから赤夏に合流させようと言う梁と、面倒臭い!と駄々をこねる緋蓮の後ろ姿を見ながらその事実を思いだし、メイソンはさらにため息を吐く。
……その時だった。
「……!」
「…?どうした。」
突然背後を振り向いたメイソンに梁が気付き、ロビーのガラス戸を開けた状態で振り返る。
緋蓮も梁の腕に自身の腕を絡めたまま、肩越しに金髪の部下を見た。
「……。」
メイソンは自分達が下りてきた階段の方をギッと睨み、ジャケットの中に手を入れる。
普通の人間には聞こえない音が、彼には聞こえていた。
……消音装置を取り付けていることで、空気が漏れている様にしか聞こえない……銃声が。
「…裏っ側でドンパチやってやがったのか。」
そう呟いて、メイソンは再び階段を駆け上がっていく。
「おい!蘇!何があった!」
梁もそれを追いかけ、階段を駆け上って行った。
その場に残される形になった緋蓮はガラス戸に手を掛けたまま、二人の後ろ姿を見送る。
瞳孔の開き切った、狂人の瞳のまま……。

スポンサーサイト
03/15|小説(本編)||TOP↑
プロフィール

川野麟&叶助

Author:川野麟&叶助
・川野麟(小説・ブログ担当)
オフラインが修羅場

・叶助(イラスト・twitter担当)
二次元に生きたい

最新記事
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

訪問者数
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。