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「君は、永久凍土って、知ってるかな?」
香港市内、摩天楼の一角。
窓一つなく、真っ白な家具で統一された空間に、二人の男が立っていた。
一人は悪魔のような笑みを浮かべ。
もう一人は天使の様な笑みを浮かべ。
目の前に、四肢を拘束し、口を塞いだ男を座らせて。
「その中には、たくさんの遺物が閉じこめられているんだよ。」
「例えば昔の動物。例えば昔の遺跡。」
「きっと出てきちゃいけないものもたーくさん埋まってる。」
そう言って、悪魔の笑みを浮かべた黒髪の男は、白い手袋をはめた手にナイフをちらつかせた。
「君は、紫鱗曾(ズーリンフェイ)と言う名前の永久凍土の中にある、出してはいけないものに触れようとした。」
天使の笑みを浮かべた褐色肌の男は、手にしていた銃をくるりと回した。
「それ相応のリスクは」
「払って貰わないとね。」
気味の悪い程揃う呼吸。
異なる笑みの中に浮かぶ、共通の意志。
二つの金属の音が、重なった。

「「お前の死をもって!」」

次の瞬間、恐怖で見開かれた男の体は、白の世界に赤い飛沫を生み出して、吹き飛んだのだった。


香港マフィア・紫鱗曾。
表の顔は繊維・鉄鋼貿易とホテル経営を行う一法人なのだが、その正体は中国裏社会の娯楽と、人と薬の市場を牛耳っている組織だ。
40もの傘下と、2万人を悠に超える組織人数を抱え、海外にも影響力を及ぼすその組織は、二人の男によって支配されていた。
一人は裏社会でも有数の高貴な血統と言われ、代々紫鱗曾を支配していた柳家の子息、柳緋蓮(リュウ・フェンリェン)。
もう一人はアジア人離れをした褐色肌を持つ『成り上がりの』男、伊梁(イー・リャン)。
なぜ頭領が二人なのか。なぜ代々一家独裁の組織に異なる家系の者が関わっているのか。
謎は尽きない。
…ただ一つ言えるのは。

「双頭の一方にでも睨まれたら、命はない。」

それは事実だと言うこと。


「良い度胸してるよねー。」
血まみれの部屋の中。
パチンと、ナイフの鞘に刃を収めながら、緋蓮は肉塊となった男を見下ろした。
この男は紫鱗曾の内部に潜り込んでいたスパイで、先日梁の仕事部屋に潜入しようとしたところを緋蓮に見つかり、捕らえたのだ。
「俺が紫鱗曾のボスの謎を暴くんだ!って、意気込んでたのかな?馬鹿だよねぇ。」
あはは、と笑いながら、緋蓮は瞳孔を開いたまま、今や物言わぬ破片となったスパイを納めたナイフの柄で再び殴る。
そんな彼の後ろでは、梁が俯いたまま銃の安全装置を掛けていた。
引き金を弾く時とは正反対の、気弱そうな青年の顔がそこにはあった。
「…なぁ、緋蓮。」
「ん?」
声を掛けられた緋蓮は、上半身を軽く捻って、肩越しに梁を見る。
彼の瞳も人懐っこそうな青年のそれへと変わっていて。
どうやら、二人ともオンオフの性格が大きく変わる人物の様だった。
「本当に、俺が紫鱗曾のボスになって…良かったのか?」
不安そうな色を宿したまま、梁は問う。
「成り上がり、と言われるならまだいい。でも……もし俺の出生が周りにバレたら…」
「梁。」
「……ごめん。なんでもない。」
話を遮った緋蓮の、真っ黒な瞳に見つめられて、梁は口にしかけた言葉を飲み込んだ。
緋蓮はしばらく彼を見上げていたが、口元に笑みを浮かべてため息を吐く。
そしてナイフを懐に仕舞うと、よいしょ、という掛け声と共に立ち上がった。
「もー梁は相変わらず心配性だなぁ!梁を馬鹿にする奴も逆らう奴も、全部俺の敵!俺がなんとかしてやるからさ!」
そう言って、彼は血塗れの手袋を外してから、ぽん、と梁の背中を叩いた。
「言っただろ?俺はお前と一緒に組織を動かしたい。だからさ、そんな心配そうな顔すんなって。」
な。と、今や死体になった男に対峙していた時とは打って変わった、輝くような笑顔で彼は言う。
「そんな簡単な理由で済む問題じゃないだろ…。」
悪い言い方をすればなにも考えず、自分の欲望で動いているとも取れる発言に、梁は頭を抱えたが、その顔に先程の不安そうな色は浮かんでいなかった。
表情の変化に気付いていた緋蓮は、目を細め、にかっと笑いを浮かべると、部屋の扉の方へと顔を向けた。
次の瞬間響いたのは、紫鱗曾総裁としての凜とした緋蓮の声。
その声に弾かれる様に扉が開いて、片付けの為に部下達が部屋に入ってくる。
「こいつの裏に居る奴もしょっぴかねぇとな。」
てきぱきと片付けをする部下達の後ろ姿を見ながら、緋蓮は腕を組む。
「もう既に目星は付けてあるだろ?」
「勿論。」
スパイを殺した時の様な冷酷な瞳に戻った梁の問いに、緋蓮はにやっと笑って即答した。
「俺達に手を出したらどうなるか、しっかり分かってもらわねぇとな。」
「あまり無茶苦茶させないでくれよ。…片付けにも金が掛かるんだから。」
「分かってるさ。」
そんな会話を交わしながら、二人は同時に部屋の出口へと踵を返した。
「後始末、よろしく。」
部下とのすれ違い様に、まだ手袋をはめていた左手をひらりと振れば、扉の横に控えていた部下達は斜め45°の整った礼で応え。
そして二人が扉の外に出ると同時に、外の世界から惨状を隠すように部屋の扉は閉められたのだった。
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Author:川野麟&叶助
・川野麟(小説・ブログ担当)
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・叶助(イラスト・twitter担当)
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