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深夜。柳家の屋敷。
巨大な玄関の扉が開くと同時に、ロビーで燎範から報告を聞いていた梁は待合い用のソファーから立ち上がった。
「緋蓮。」
「あ。梁。ただいま。怪我はどう?」
「ただの掠り傷だ。すぐに治る。」
梁はそう言って、治療をされたあとの包帯を軽くさする。
本来は包帯を巻かれる様な派手な治療をする必要性はないのだが……
「そう言いながらちゃんと治療して貰ってるじゃんー。」
包帯を見て満足そうに微笑む彼が、それを許さないのである。
梁は深くため息を吐くしかなかった。
「それより、緋蓮。」
「ん?」
。。「…どこに行っていた。」
子供の様な笑顔を浮かべる彼に、梁は問い詰める様な低い声で訪ねる。
だが、緋蓮は笑顔を崩さない。いつの間にか、開ききっていた瞳孔も元の大きさに戻っている。
「秘密。」
緋蓮はそう言って、梁と燎範の傍らを通り過ぎ、屋敷の奥に続く扉をくぐっていった。
――部屋の中に、血の香りを残して。
彼がいなくなると同時。チリチリという乾いた電子音が燎範のポケットから響く。
燎範は梁に一礼をすると、電話を取った。
「…そうか。ご苦労。その件も上に流す。」
簡潔に纏められた報告だった様で、燎範はそれだけ告げると、電話を切る。
「…Lanciaの二人が殺されているのが発見された様です。どちらも首元に一閃と大量のナイフを突き刺した跡が。抵抗した様子はないとの事でした。」
「そうか。」
梁はため息を吐くと、ソファーに腰を下ろす。
「一体誰が殺ったんだろうな。」
「…分かりかねますね。」
燎範も腰を下ろしながらそう言った。
そうは言いつつも、二人は犯人は誰か分かっているのだが。
「それで、奴らの積み荷は結局出所は分かったか?」
「はい。積み荷自体は茶葉と雑貨類で入ってきていましたが、伝票を調べさせたところ、正規の通関は通っていない模様でした。先程の報告によると具体的な目録が死体の近くにあったそうなので、恐らく、武器を集めて何か大きな事をするつもりだったのでしょう。」
燎範はそう説明すると、二人の前にあった机に乗せていた書類を梁に差し出した。
「回収した銃は東南アジアとヨーロッパの実動部に分散させます。本来は東南アジアだけの予定でしたが、メイソンが偉く気に入った様でしたので。薬に関しては李大兄を通じて取引レートに乗せる手筈を整えました。」
淡々と説明をする燎範であったが、今朝の有事発生から今まで1日も経過していない。
公安への根回しや、現場で戦う部下と梁達上層部との伝達を含め、彼は全てこなしていた。
「今回の衝突は最終的に公安と不穏分子との衝突とし、一度武器等もマスコミを通じて公開します。また、Lancia幹部の殺害に関しては報道せず、公安特殊部隊の活動の一貫として処理していただきます。…彼らとしても、働かずして自分達の実績が上がりますから、嫌な顔はしないでしょう。」
「そうか…。ご苦労だったな。」
「恐れ入ります。」
燎範はそう言って、軽く頭を下げた。
その時だった。
再び玄関の扉が開き、二つの人影が屋敷に入ってくる。
「赤夏。それに、李か。」
「夜分に失礼いたします。伊様。」
初老の男性――緋蓮の部下である李秀は、深々と頭を下げた。
一方でその隣に立っていた赤夏はどこか疲れた表情を浮かべている。
「…緋蓮を、回収してくれたんだな。」
「はい。赤夏もずっと総経理を探しておりまして、私めの方に総経理から連絡が入ったものですから、一緒にお迎えに上がりました。」
「そうか…。世話を掛けたな。」
「いえ。むしろ、総経理をお止め出来ずに申し訳ありません。」
赤夏はそう言って、頭を下げようとする。
だが、梁は首を振って止めさせた。
「皆よくやってくれたよ。今日はゆっくり休んでくれ。」
そんなねぎらいの言葉を掛けて、梁はソファーから腰を上げる。
そして、大きく肩で息をすると、先程緋蓮がくぐって行った扉の方へと歩いて行った。

廊下を進み、そのつき当りに、緋蓮の部屋はある。
「さーてと、お風呂いこーっと。」
そんな事をのたまいながら、部屋から出てきた彼に
「緋蓮。」
梁は声を掛けた。
「あ。梁。お話し終わった?俺、これからお風呂行くけど。」
「……その前に、俺の話を聞いてくれ。」
「なに?」
緋蓮はきょとんとした顔で梁に聞き返す。
「今回は、林が上手く事を運んでくれたから、お前が勝手に行動しても、大事にはならなかった。…確かに、柳のやり方は、【自らの手で引き金を弾き、剣を下ろせ】だ。それは重々承知している。」
深刻な顔をして話す梁を、緋蓮は表情を変えないままじっと見つめている。
「だが、頼むから、私情で動くことだけはやめてくれ。今回も…俺が怪我したからだろう?奴らを殺しに行ったのは。」
「……。」
彼はすぐに言葉を返さなかった。
しばらく梁の顔をじっと見つめた後、へへっ、と笑う。
いたずらがばれた子供のように。
「分かったよ。でも、梁も怪我しないでね。俺の精神がもたないからさ!」
緋蓮はそうにこやかに言うと、風呂のある方向に踵を向ける。
「じゃ、俺先に行ってるね!一緒に風呂入ってくれてもいいんだよ?」
「……お前が上がった後に行く。」
「えーなんだよーつれないなー。」
「ガキじゃねぇんだから…。ったく。」
そう言い残しながら、唇を尖らせる彼を無視して、梁は緋蓮の部屋の隣にある自分の部屋に入って行く。
そしてパタン、と扉を閉めた。
廊下には緋蓮だけが残される。
「……。」
閉まった扉を見つめる彼。
その瞳は、瞳孔が開き切っていた。
「でも、」
蚊の鳴くような、本当に小さな声で、彼は呟く。
「…りゃんは、おれのだいじなものだから。」
そう言い残して、彼はその場を立ち去ったのであった。


柳のやり方 END
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Author:川野麟&叶助
・川野麟(小説・ブログ担当)
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・叶助(イラスト・twitter担当)
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