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ぴちゃん、ぴちゃんという音が部屋中に反響する。
応急処置にと置かれたバケツには、既に人差し指の中ほどぐらいの長さまで水が溜まっていた。
「台風からの記録的豪雨、ってのもやになっちゃうね。」
緋蓮は飾り天井を仰ぎながらそう言った。

ここは柳家邸宅の中にある、離れと呼ばれる建物。
ヨーロッパ様式の本邸とは異なり、中国王朝が栄えていた時代の宮廷に似せた様式となっている。
2つの小屋と2つの長屋が回廊で繋がれていて、回廊に囲まれた中央には大きな池と梅園があり、離れのどこからでも綺麗な景色が見られるようになっていた。
かつては柳家に関わる者以外の出入りが禁じられた場所で、そして、梁が幼少期を過ごしていた場所でもある。

「こんな建物、さっさと壊した方がいいと思うんだけどなぁ。雨漏りするし、風の時は建屋の戸を閉めないと大変な事になるし…。」
「だめだ。」
絶え間なく滴が零れる部屋に辟易したのか、そう口にした緋蓮に、梁は即座に否定の言葉を投げる。
「ここは柳家の歴史が詰まった場所なんだろ?そう簡単に壊していい場所じゃない。」
そう言いながら、彼は雨漏りの水が跳ねて濡れた家具を丁寧に拭く。
その目はまるで、昔を懐かしむ様であった。
梁曰く、彼は物心ついた時にはここで過ごしていて、同じ様に離れに住んでいた緋蓮の叔父の陽緋と、彼の男娼であったヴィエリという男性と時々遊んでいたらしい。
緋蓮もこの離れには父親と一緒に時々訪れていたが、5歳になるまで梁には出会った事はない。
故に彼がこの離れでどの様な生活をし、どれだけの思い入れがあるのかは分からない。
ただ、ここに来る度に過去の記憶、自分の知らない過去を振り返る梁に、緋蓮は苛立ちを覚えていた。
梁の全てを知っていたいと思う故に。
「ああ。そうかい。でも、こんなに雨漏りしていたらどこから腐っていくか分からないよ?」
「そうだな……補修工事だけでもしておいた方がいいかも知れない。」
「そんなお金どこにあるの?」
「柳家の独立予算ならまだ残っていただろう。それでも足りないなら俺の個人資産崩す。」
「…あっそ。」
梁の言葉に、緋蓮の機嫌はますます悪くなっていく。
それに気付いていないのか、梁は塗装の剥げた家具を撫で、これも修理しないとなぁ、とぼやいていた。
「古い物だからってすぐに壊すのは良くない。大事に最後まで使わないとね。」
そう言って振り返った時、そこには緋蓮の姿はなかった…。
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