上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--|スポンサー広告||TOP↑

香港のカジノ、バイオレットドラゴン。
紫鱗曾が運営する闇カジノと闇オークションの店である。
その総指揮を任されているのが、緋蓮の部下である李 秀だ。
名物ディーラーとしてテーブルに立ちつつも、資金繰りや施設維持などを一手に引き受けている。
今日は月一の売上報告を緋蓮に行っていた。

「今月も上々って感じ?」
王座の様なベルベット生地の椅子に腰掛けて、綺麗に纏められた書類に記された数字を眺めながら、緋蓮は上機嫌に言う。
「お陰様で。柳老爺が用意して下さった品物が高く捌けまして。カジノの方はマイナスが出てしまったのですが、プラスにする事が出来ました。」
「…あ。本当だ。」
秀の言葉に、改めて書類を確認した緋蓮は、カジノのゲーム売上が赤く染まっている事に気付き、眉間に皺を寄せた。
そして、この数字はどうしたの?と言うように秀を見上げる。
「実は…私がマカオの方で指名を受けて出張した日に、大勝ちした者がいたそうで。その損失です。」
秀はそう言ってため息を落とした。
香港屈指のカジノであるバイオレットドラゴンの1ヶ月の売上をたった1日赤字に追い込む額を勝つには、余程の強運があったか、イカサマを使うしかない。
元カジノ荒らしの秀には、前者の確率がいかに低く、後者がいかに容易いかはよく分かっていた。
だからこそ、自らが居なかった隙を突かれ、せっかくの売上を水泡に帰してしまったのがとても悔しかったらしい。
普段なかなか見ない表情を浮かべる彼を緋蓮は横目で見ていた。
「普段イカサマ対策はどうしてるんだっけ?」
「2回まではセーフ、3回目からは呼び出しになります。ですが、奴は大金を掛けて大勝ちするそうで、1ゲームやったらテーブルを変え、計15テーブルを回したそうです。」
「監視員は居なかったの?」
「同じタイミングで別の悪漢がフロアレディに手を出した件が発生してそちらに人数を割かれてました。その悪漢とは関係はないとの事でしたが…」
秀はそう言って、ジャケットから写真を取り出す。
そこにはテーブルに座り、肘をつく若い男と、同じ年齢ぐらいの別の男が写っていた。
「勝ちのチップはこの男に預け、ファーストゲームを装って他のテーブルに着くのを繰り返しているのが、防犯カメラに写っておりました。」
この二人が共犯である、と、秀は伝える。
緋蓮はその写真をじっくりと見ていたが、何かに気付いたのか、へぇ、と興味深そうな声を上げた。
「俺、こいつら知ってるよ?」
「!?」
「中国本土の義賊とか言われてる集団の奴だよ。内陸地の少数民族の出の奴が多い集団で、金持ちの家とか賭博場から金をがっつり持ち出しては、内陸地に還元しているらしい。」
緋蓮の説明に、秀は口元に手を当て、考える様な仕草を取る。
「その様な集団なら、国家公安部が黙ってはいないのでは?」
「それがねー公安に不満持ってる連中がうまーく隠しちゃってるらしいんだよ。俺は使用人として雇う奴らが怪しいから気をつけろって言われて、義賊の可能性がある奴の写真もらったんだけど、こいつらそこに居たよ。」
柳家は表の世界には大資産家という名前で通っている。故に“仕事熱心”で“真面目な”人間からは柳家が紫鱗曾という事も知られておらず、今回の様に犯罪行為を働く連中の情報をもらう事もある。
緋蓮がその情報を掴んだのは一昨日の事で、カジノ荒らしの二人がやってきてから二週間弱時間が経っていた。
「ほんっと、公安の奴らって情報おっそいね。ま、カジノの様子を逐一チェックしなかった俺にも否はあるけどね。」
「申し訳ございません…。」
けらけらと笑う緋蓮に、秀は肩を落としながら謝る。
緋蓮は別に気にはしてないよ、と言うように手をひらひらと振り、再び書類に目を落とした。
──その時

部屋の扉がノックされ、続いて秀の名を呼ぶ声が聞こえる。
秀は緋蓮に一礼して、自分を呼ぶ者の所に向かった。
「どうした。」
「お話中失礼します。李大兄。」
そう言って軽く会釈したのは、秀の下でカジノ運営を行う副支配人と呼ばれる構成員だ。
「つい先程、奴らがまた来ました。そのご報告に。」
「……。」
彼が言う奴らとは、先程話に上がったばかりの男達の事だろう。秀の顔が険しくなる。
「今度はちゃんと監視を付けているな?」
「はい。今のところ不審な動きはありません。ですが…いかが致しますか?」
副支配人の問いに、秀は腕を組む。
その様子をぼんやりと眺めていた緋蓮は、唐突に口を開いた。
「ねぇ。俺、秀のカードテクニック見たいなぁ。」
「えっ?」
その言葉に驚きの声をあげたのは副支配人で、当の秀自身は彼の言葉に振り向いただけだ。
「…それは、ディーラーとして、ではなく、ですか?」
「解釈は任せるよ。」
緋蓮はけらけらと笑うと、椅子から腰を上げた。
「俺も現場に行くよ。緊急視察だ。」
そう言って、彼は秀に向けて微笑んだ。
この状況を心底楽しんでいると言わんばかりの彼の顔に、秀はため息と共に、襟元にしていたリボンタイを解くのだった。
スポンサーサイト
08/30|小説(本編)||TOP↑
プロフィール

川野麟&叶助

Author:川野麟&叶助
・川野麟(小説・ブログ担当)
オフラインが修羅場

・叶助(イラスト・twitter担当)
二次元に生きたい

最新記事
カテゴリ
リンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

訪問者数
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。